「藍」のレンタルセットにセレクトされた植物のシルエットが印象的なメインプレート。
洋食器の形状に墨絵のように濃淡で表現された植物が東洋的な独特の雰囲気を持っています。シンプル、ミニマル、シックという単語が浮かぶデザインですが、今回はこのプレートにデザインされたパターンについてのエピソードをご紹介したいと思います。
このパターンデザインの名称は“Montmartre”。
芸術家の街として知られるモンマルトルがその由来です。アート性の高いシリーズとして古の芸術家たちに敬意を表して名付けられた “Montmartre”は約10年前に海外、国内のホテルやレストラン向けにデザインされました。当時の食器業界のトレンドはEast meets Westだった事もあり、フォーマルな洋食器の形状と東洋的な感覚のデコレーションを融合させる事をコンセプトにデザインされました。
プロユースのパターンデザインにはいくつか約束事があります。料理の邪魔をしない事はもちろんですが、説明的な表現はなるべく避ける、具象ではなく抽象的にするなどです。普段私たちが百貨店や雑貨屋さんなどで手にする食器は鮮やかな花柄や果物の柄に人気がありますが、業務用で使用する場合は具象の柄が料理の盛りつけやソース、色合いを邪魔してしまう事があるからです。あくまでも料理が主役ですからシェフの創造を助ける事はあっても邪魔するようなデザインは好まれません。
この“Montmartre”のパターンは、それらを前提に草花をシルエットで処理した伸びやかなレイアウト、東洋的な感覚を強調する余白の美しさと墨絵的な表現(独特な色合いや溜り・滲みなど)を意識してデザインされました。
また、プロユースの食器の世界では上下左右といった方向性があるパターンは敬遠される傾向にあります。方向性があると盛り付けの際にその方向性に合わせないと不自然に見えてしまう事があり、その事で盛り付けの自由度が無くなってしまう場合があるからです。
そんな定説がある中で敬遠されがちな方向性のあるデザインが受け入れられた理由は、墨絵の様でありシルエットにも見える抽象的な表現と伸びやかなレイアウトに拠るものであり、この“Montmartre”は世界で受け入れられ今や10年を超えるロングセラーのパターンになりました。
East meets Westなデザインのプレートは、和洋中を問わずに使える便利な一枚。洋食器はシリーズで揃いの器を使いたくなりますが、このプレートはガラスや和食器、クラフティな異素材との相性も良くMix and Matchなテーブルコーディネートの幅を広げてくれます。
普段はなかなか知る機会のないプレートのパターンデザインについて今回はご紹介させて頂きました。どんな意図で色やレイアウトが決まったのかを知ると、お料理を盛りつけるときのヒントやアイディアに繋がると思います。また、ほとんどの方が感覚的に気に入った器を買ったり使ったりしていると思いますが、「どうしてこのプレートは使いやすいのかな?」「この絵柄はどんな料理とも相性が良いけど、何故かな?」という目線で器を改めて見ると、選ぶときの基準が変わったり、新しい発見がきっとあると思います。
今回ご紹介した“Montmartre”のプレートを実際に使ってみたい!と思った方はこちらから。